海外不動産投資の際には日本と現地の商い習慣の違いや現地特有のリスクを理解した上で投資をすることが重要です。
今回はカンボジア不動産投資に興味のある方に注意していただきたい点をご紹介します。

①プレセール物件のリスク

1.グロス面積(GROSS SIZE)とネット面積(NET SIZE)の違い
・グロス面積(GROSS SIZE) :壁、柱、梁、廊下の一部などを含めた面積

・ネット面積(NET SIZE):実質的に有効な面積

カンボジアではほとんどのデベロッパーがお部屋の面積表記が「ネット面積」ではなく「グロス面積」で販売しています。
日本の商い習慣の場合はネット面積での表記になりますので、購入後に実際に見てみるとかなり小さく感じる、「ネット面積」に換算すると割高なお部屋だった、等の問題を防ぐために事前にネット面積を確認しておくことが重要です。

また、カンボジアではバルコニーやベランダも有効な面積に含まれます。
 

2.プロジェクトにより異なる状態(家具家電付き/一部家具家電付き/スケルトン(コンクリート))で引き渡される
カンボジアのプレセール物件は物件毎に引き渡しの条件が異なります。
また、カンボジアは家具家電付きの状態での貸し出しが一般的なので、賃貸付けのためには家具家電付きの内装が必要です。

・デベロッパーが家具家電含めた内装をした状態のお部屋。
‐利回り保証付きコンドミニアムやプロモーションの場合が多いです。
メリット:内装費用と内装期間が必要ない。  デメリット:画一的で他のお部屋との差別化がしづらい。

・基本的な内装(お部屋内の壁やドア、フローリングや壁、キッチンやトイレなど)がついた状態のお部屋。
メリット賃貸付けがしやすい内装をすることで他のお部屋との差別化ができる  デメリット:内装の費用と期間がかかる
内装のグレードにもよりますが、1千万円台の1ベッドルームで約80万円〜120万円程度の費用想定です。期間は着工から2ヶ月程度です。

・スケルトン(コンクリート打ちっぱなしの状態)のお部屋。
メリット:間取りやフローリング等の変更が可能なため内装の自由度が高い・内装付きのお部屋より物件価格が抑えられている場合がある
デメリット:内装の費用と期間が大きくかかる
1千万円台の1ベッドルームで約200万円〜250万円程度の費用想定です。期間は着工から3ヶ月〜4ヶ月程度です。

購入の際には家具はどこまでついてくるのか、家具家電付きでは無い場合は内装はどのように対応するのか、おおまかな費用はいくらになるのかも確認しましょう。

3.登記手続き・引き渡しのリスク
カンボジアでは購入のサポートは契約書締結まででその後の引き渡しや登記手続き、内装のサポート等は仲介サポート業務外ということで対応されない仲介会社もあります。

引き渡し後も賃貸付けのための賃貸仲介や管理業務を対応されない場合もあります。
購入後のトラブルを避けるため、仲介会社のサービス範囲や業務内容を事前に確認しましょう。
また、カンボジアの物件引渡しの際にはオーナーによる瑕疵確認(インスペクション)が必要になります。
日本の場合は出来るだけお部屋を仕上げてインスペクションとなりますが、カンボジアの場合はある程度の状態でインスペクションとなります。
インスペクション時に瑕疵を指摘してお部屋の仕上げを依頼する必要がありますので、引渡し手続きの代行を依頼する際には経験豊富な仲介会社に依頼した方が良いでしょう。

4.竣工のリスク
一般的にプレセールの物件は竣工リスクのために価格が割安になっていますが、竣工が大幅に遅れたり中止となるリスクもあります。
竣工リスクを抑えるためにはデベロッパー選びが重要です。
カンボジア現地での実績がなく、銀行から借り入れづらいデベロッパーやプレセールの売れ行きが悪いプロジェクトは資金不足により竣工リスクが高まります。
反対にカンボジア現地で実績と評判の高く、プレセールの売れ行きが好調なデベロッパーは竣工リスク少ないです。
また、特定の国籍に偏らず、カンボジア人と外国人から評価の高いプロジェクトの方が賃貸付や売却がしやすくオススメです。

まとめ日本とは商い習慣が異なるという認識を持ち様々な内容を事前に確認する必要があります。

②中古物件のリスク

1.所有権を確認する
カンボジアの不動産登記システムは2013年から施行されたばかりで歴史が浅いです。

そのため中古物件の場合、国レベルで承認された土地所有権(ストラタタイトル)ではなく地方自治体レベルで購入を証明する書面(ソフトタイトル)で所有されている場合があります。

ストラタ・タイトル(Strata Title): 国レベルで承認された土地所有権の中でもコンドミニアム等の区分所有権に使われる。カンボジア人及び外国人が取得可能。

ソフトタイトル(Soft Title)地方自治体レベルで購入及び占有を証明した書面で厳密には所有権を示すものではない。原則カンボジア人のみ取得可能。ハードタイトル、ストラタ・タイトルよりも劣る。
また、カンボジアは登記手続きは約6ヶ月程度と非常に長い期間を要します。
お部屋によっては所有権移転が完了していない状態で売却活動をしている場合もあります。

さらに、カンボジアでは税制法律が制定されても実際には運用が行われていなかったり、逆に制度として記載されていない手数料を行政窓口で請求されたりと不透明な環境です。
以下はあくまで参考程度として詳細についてはお問い合わせください。

【購入時の諸経費】
1.資産譲渡税:物件価格の約4%
2.登記手続き申請に支払う費用:約1,500USD
3.(弊社)購入サポート手数料:物件価格の5%+VAT10%(契約金額の5.5%)
4.その他:翻訳費用や認証費用等の実費

2.お部屋の状態と引き渡し条件を確認する
現状引き渡しの場合が多いですが、家具家電の引き渡しも含め事前に詳細条件を確認しておきましょう。
引き渡し後に大きな不具合が見つかり修繕費用がかかる場合がありますのでお部屋の状況も確認しましょう。

まとめ中古物件の売買では所有権と引き渡し諸経費、条件、お部屋の状況をしっかりと確認することが大切です。

③利回り保証付き物件について

カンボジアでは利回り保証付きの投資用物件が販売されています。
しっかりと契約内容通りの利回りを投資家にリターンしている物件もありますが、運営が上手くいかずオーナーに収益が入らないプロジェクトもあります。
また、利回りは出ている物件でも売却の際に買い手を見つけるのが難しい物件もあるので様々な可能性の検討が必要です。

1.ホテルコンドミニアムの場合

A.観光客、短期滞在者のニーズが高い立地かどうか

B.リピーターを獲得するホスピタリティの高い運営・管理会社かどうか

C.周辺ホテルに負けない物件クオリティかどうか

以上の点を十分に確認する必要があります。
また、万が一、ホテル運営の管理会社が撤退し、通常のコンドミニアム賃貸運用となった場合でも賃貸付けや売却に問題はないかの想定も必要です。

2.オフィスビルの場合
カンボジアは法人で営業するメリットが少ないため、個人事業での営業が多く法人設立数が増えづらいという背景があります。

2025年現在、様々なオフィスがございますがスタートアップ向けのシェアオフィスはテナントが埋まってきていますが、大型オフィスでは空きテナントが見られます。
現時点ではオフィスビルへの投資は難しいマーケットですが、今後外国企業の参入やカンボジア国内での経済発展により活発になる可能性があります。

まとめ:利回り保証という言葉に惑わされず現地のニーズをしっかり把握する必要があります。
優良な利回り保証の物件は賃貸付けや管理の手間がかからず安定的な収入が入るので投資家の方には魅力的です。

④投資用物件/お部屋選びのポイント

・エリアによりターゲットとなる国籍が異なるのでその国籍の文化的なニーズを把握する必要がある
例)中国人が多いエリア→中国人はリバービューを好む傾向がある→シティビューよりもリバービューのお部屋を選ぶ。

欧米人が多いエリア→インフィニティプールを好み、狭い部屋サイズのお部屋を好まない→インフィニティプール付きで開放感のあるお部屋を選ぶ。等
もちろん個人個人の嗜好は異なりますが、購入する物件のエリアの国籍属性と物件、お部屋がマッチしているか確認しましょう。

・エリアによりファミリー層、単身需要、賃料帯が異なる
例)インターナショナルスクールなどが多く、オフィスが少ないエリア等のファミリー層の需要が高いエリアでは単身の1ベッドルームを購入するよりも2−3ベッドルームの方が賃貸・売却のニーズが掴めます。

・開発が進むエリアは供給過多リスクもある
→プノンペン郊外への不動産投資を行う場合は地価上昇率に惑わされず、将来的な供給過多リスクへの認識も必要です。成長しているエリアの中だからと安心せず、今後新しく供給される可能性のある物件との競争にも勝てるような物件かを厳選する必要があります。


・物件の中でも不具合発生/空室リスクの高い部屋がある
例)インフィニティプール等のファシリティフロアの真下のフロアは他のフロアより水漏れ等の不具合リスクが高い。
物件により低層階のフロアは騒音が気になるため空室リスクが高い。
日中部屋に滞在するファミリー向けのお部屋2−3ベッドルームは北・東向きが人気。等

厳選した物件の中でさらにお部屋も厳選することで、リスクを最小限に抑え、リターンを最大化させることができます

まとめ:現地の賃貸マーケットのニーズや管理事情をしっかりと把握することが重要です。投資用の物件を購入する場合は現地で賃貸や管理をしている業者に具体的な賃貸需要(想定される国籍・ファミリー構成・収入帯)や物件管理面での懸念事項を確認しましょう。

⑤カントリーリスク(Country Risk)

カンボジアでは政治的には安定している一方で、法制度や行政手続きの透明性には課題が残されています
不動産分野においても、は、登記制度や契約執行の取引には慎重な対応が求められます。
また、汚職や行政判断の属人的な運用がビジネスリスクを高める要因となっています。
加えて、外国人の土地所有制限や、政策変更による税制の見直しなど、制度面の変更が急に行われる可能性もあり、投資判断には常に現地の最新動向を踏まえる必要があります